産婦人科で国内初のオンライン相談制度を静岡県富士市の医院が導入 相談料無料

オンライン診療の一歩手前となるオンライン相談のシステムを導入する医療機関が増えている。コロナ禍を契機としたオンライン診療の実現に向けた取り組みが全国各地でみられる中、静岡県内の産婦人科で運用が始まった。

静岡県富士市の中島産婦人科医院は今月1日から、患者向けのオンライン相談サービスの提供を開始した。Kids Republic(東京・千代田)の「産婦人科オンライン」「小児科オンライン」を活用する。産婦人科医、助産師、小児科医による相談は1回あたり10分で、費用は無料。同医院で受診している患者が対象となる。

中島産婦人科医院(出典:医院サイト

オンライン相談サービスを提供するKids Republicは2016年に創業。小児科医が相談に応じる「小児科オンライン」を立ち上げ、2018年には妊産婦を対象とする「産婦人科オンライン」の提供を開始した。富士通やバイドゥ、小田急電鉄などの企業が福利厚生として導入し、自治体としても岡山市が2019年7月の試験導入を皮切りに、このコロナ禍においては奈良県三宅町、広島県府中市など5つの自治体が運用を始めた。このほか三井ダイレクト損保の契約者向けサービスとしても利用されており、そのニーズは拡大傾向にある。

医療機関の導入では、岩手県立大船渡病院や横浜市青葉区のファミリークリニックあざみ野で始まっており、今回産婦人科医院の採用は全国で初となる。不要不急の外来受診減少と、コロナ禍による感染リスク軽減の双方の目的を併せ持つオンライン相談ツールの普及は今後も広がっていくとみられる。

産婦人科オンライン:https://obstetrics.jp
小児科オンライン:https://syounika.jp
中島産婦人科医院:http://nakajima-sanfujinka.com/

渋谷区松濤の保育園で医療的ケア児の預かり 区内初となる受け入れを開始 フローレンスが研修

渋谷区松濤にある大向保育園で、渋谷区内では初となる医療的ケア児の受け入れを開始する。都内では他にも港区の元麻布保育園など。
「医療的ケア児」の受け入れに対する施策に積極的な栃木県宇都宮市、埼玉県朝霞市などがある。

「訪問型病児保育」「障害児保育」「小規模保育」などを手掛けるNPO法人フローレンスは12日、渋谷区内の認定保育園である大向保育園(読み:おおむかい)で医療的ケア児の受け入れを開始すると発表した。受け入れ人数は調整するとのこと。ことし6月にフローレンスによる保育士・看護師向けの研修を実施し、今回の実現につながった。

出典:フローレンス

渋谷区のこども家庭部保育課長は、医療的ケア児の受け入れの際に必要なことは、「安全にお預かりできる環境や設備等のハード面」と、「職員における障害児保育に対する知識の蓄積、心構え等のソフト面」の準備であるとする。特にソフト面における不安の解消にむけ、フローレンスによる職員向けの研修を実施したという。

フローレンスは都内6箇所に「障害児保育園ヘレン」の事業と、「障害児訪問保育アニー」、医療的ケアシッターの「ナンシー」の3事業を展開する。ヘレンでは保護者向けに受け入れに関する説明会をオンラインで実施しており、アニーでは入園選考を受けることができる。

大向保育園 入園申し込み:渋谷区  保育課入園相談係(03-3463-2492)
フローレンス 障害児保育園ヘレン:https://helen-hoiku.jp/
障害児訪問保育アニー・医療的ケアシッターナンシー:https://specialneeds.florence.or.jp/service/

オンライン診療の成否はどこに? 禁煙外来の診療実績が2万回超え 健保加入者が500万人に コロナ禍による家庭内圧力も影響か

オンライン診療への動きが本格化している中、禁煙外来の受診件数実績が公表された。オンラインで受診しても良いと思う動機は、一体どこにあるのだろうか。またその診療科目に違いはあるのだろうか。

オンライン診療などの健康支援プログラムを提供しているリンケージ(東京都中央区)は先月30日、オンライン禁煙プログラムを利用した診療回数が累計で2万回に達し、契約健康保険組合の加入者が500万人に到達したことを発表した。コロナ禍でクリニックへの物理的受診を控える患者に対して規制緩和がされたオンライン受診の制度に加え、在宅時間が増えて喫煙の影響を家庭内に及ぼしやすい背景から、受診のきっかけとなっている可能性が考えられる。

出典:Photo AC

リンケージは2017年から禁煙外来のオンライン診療を実施。禁煙外来のほか、特定保健指導、糖尿重症化予防、女性の健康の計4つをサービスとして提供しており、135の組合に導入されている実績を持つ。


9月17日には田村厚生労働大臣がオンライン診療の恒久化に向けた検討を進めるという考えを表明しており、オンライン診療のニーズは高まるものと見られている。また1週前の9月10日には、LINEが11月からオンライン診療サービス「LINEドクター」の提供を開始することを発表済みだ。LINEでは現在、医療機関向けの事前登録を受け付け中だが、禁煙外来など特定の診療科目に特化した医療機関の登録が増加するのか、あるいは多岐にわたる診療科目なのか、その動向に注目したい。

LINEドクターの仕組み(出典:LINE)

リンケージ:https://linkage-inc.co.jp/
LINEドクター:https://linehealthcarecorp.com/ja/lp/common/recruit/clinic-202009

母子手帳アプリ「母子モ」大分市など12市町村での提供を開始 九州を中心に拡充進む

母子手帳アプリ「母子モ」の導入が進んでいる。10月に入り全国で12の市町村が提供を開始した。経済対策ではカバーしきれないソフトの部分をアプリで補う、その結果が導入数に現れている。

エムティーアイが提供する母子手帳アプリ「母子モ」が、今月より新たに12の市町村で導入された。妊娠・出産・育児に関する保健師からのアドバイスを受け取ることができたり、自治体が配信する地域情報なども提供される。「母子モ」を用いることで、母子健康手帳を「保護者の記録」としてだけでなく、「育児日記」としての役割を持たせることが可能だ。

10月1日発表分 導入自治体とアプリ名一覧(編集部作成)

今回発表となった12の市町村では、いずれも独自の子育て施策を行ってきており、子育て世代への積極支援の一環とみられる。例えば熊本県玉名郡玉東町では、チャイルドシートの3ヶ月無料貸し出しや給食費の補助、さらにインフルエンザ予防接種は0歳から中学3年生まで全額助成するだけでなく、その保護者も1000円の補助を行うなど、経済支援策を次々と行っている。同日から提供開始をしたオンライン相談サービスでは、町の職員や助産師、保健師に対して妊娠や育児に関する相談ができるようになるため、ソフト面での支援強化が期待される。

「母子モ」アプリ概要
月額料金(税込):無料
アクセス方法:
<アプリ>App Store、Google Playで『母子モ』で検索(対応OS: Android 4.2以上、iOS 9.0以上)
<Webブラウザ>https://www.mchh.jp にアクセス

EPARKがインフルエンザ予防接種のオンライン予約受付を開始 全国5100のクリニックが登録

10月に入り、新型コロナウイルスの感染再拡大が懸念されるなか、インフルエンザの予防接種のオンライン予約が始まった。クリニックでの待ち時間が感染につながると危惧する人も少なくない。インターネットサービスを賢く利用し、感染リスク軽減に努めたい。

全国の医院・クリニックの検索・予約受付・口コミのサイト「EPARKクリニック・病院」を展開するEPARKは1日から、インフルエンザ予防接種のオンライン予約の受付を開始した。新型コロナの感染拡大防止の観点から受診控えが進む中、インターネットで事前に申し込んでおくことでクリニックでの滞在時間を減らすことがねらい。同サイトで予約・接種をしたユーザーにはポイント特典も付与される。

出典:EPARK

従来はEPARKの登録会員のみ予約を受け付けていたが、今回始まったインフルエンザ予防接種に関する予約については会員の家族も同時に受け付ける。この冬に新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスが同時に感染拡大した場合、医療機関が逼迫する可能性を鑑み、積極的な予防接種を広く訴えていく。

定期接種対象者とされる65歳以上の高齢者の接種が優先される今月は、26日以降に一般の接種希望者が急増するとみられ、同社が行ったアンケートでも、クリニック内での待ち時間が感染リスクにつながると懸念するユーザーは8割にのぼることがわかっている。

出典:EPARK

EPARKクリニック・病院:https://fdoc.jp/

正しく不妊治療のことを学ぶ 専門家による企業向けのオンラインセミナーを開始 プレ・マタハラを防ぐために

「企業が」不妊治療に対する正しい理解をする、という視点のオンラインセミナーが始まる。福利厚生の一環としてはもちろん、正しい相互理解の促進による従業員エンゲージメント向上が期待される。

不妊治療のデータ検索サービス「cooromi」を提供するvivolaは、企業向けに不妊治療セミナーを始める。不妊治療と仕事の両立をサポートするNPO法人フォレシアと、胚培養士の3者が講演する。企業、不妊治療患者、医療現場のそれぞれの観点から理解啓発を行い、従業員への福利厚生をはじめとする制度設計に役立ててもらうことがねらい。

登壇者一覧。出典:vivola

cocoromiは体外受精で妊娠した妊産婦のデータに基づく、統計的な治療検索サービスで、ウェブとアプリの両方から利用することができる。主に治療にかかる費用と期間、体外受精そのものの概要などを公開しており、治療を検討している人にとっての参考指標になっている。同社が体外受精経験のある夫婦300組へ実施したアンケートでは、治療方法を理解していないまま治療を続けていたと回答した夫婦が7割にも及んでいるといい、高額医療費が発生するにもかかわらず正しい理解が及んでいない可能性が高い。

NPO法人Fineの2017年の調査によると、不妊治療をきっかけに勤め先を退職する事例が5人に1人の割合でいることがわかっている。同法人の松本 亜樹子理事長は神奈川県への寄稿文の中で、「不妊治療は女性の生理周期に合わせて注射や投薬が行われるため、突発的な通院が必要で、先の予定が立てられない」「前回同様の治療を行なっていても、その時の体調により、ホルモン剤の効き目が変わってくるので、頻繁な通院も必要」と述べており、職場の理解なしに不妊治療を行うことは現実的にとても高いハードルであることがわかる。

フォレシアでは、完全匿名で相談できるLINEチャットボットのサービスも展開しており、不妊治療の専門家が常駐し、24時間対応している。概要は以下のとおり。

LINE完全匿名チャットボットサービスの概要。出典:vivola

オンラインセミナー問い合わせ(メール):contact@forecia-jp.com
NPO法人フォレシア:https://forecia-total-support.com/

健康管理アプリ「CARADAお薬手帳」リニューアルリリース 調剤予約や服薬のリマインドも 連携薬局も増加中

オンライン服薬の流れが加速している。新アプリのローンチやリニューアルなどが進み、スマートフォンを活用した健康管理のできる医療機関が増加。今回は薬局との連携に強いエムティーアイ社がアプリリニューアルを行った。

エムティーアイが運営するアプリ「CARADA」がリニューアルし、「CARADA お薬手帳」として28日にリリースされた。調剤予約や服用のアラート、ユーザー以外の家族の管理もすることができる。また導入薬局も都内では120を超えるなど、徐々に浸透している模様だ。

出典:エムティーアイ

調剤を予約する際に必要な問診票のデータ送信機能も搭載

ことし9月1日に改正薬機法が施行され、「調剤した薬剤の適正な使用のため必要があると薬剤師が認める場合には、服薬期間中のフォローアップが義務」となり、薬局側は患者の状態に合わせた服薬指導の徹底がより強く求められている。CARADAお薬手帳では、既往歴や副作用などの情報を確認できるようになっており、細かく患者個々人に合わせた服薬指導が実現できるとしている。

主な機能は以下のとおり。
・調剤予約…トップ画面からすぐに調剤予約ができ、あわせて既往歴や副作用歴、アレルギーなどの情報も送ることが可能
・予約リマインド…調剤予約後、トップ画面に予約日時をリマインド通知
・薬局連携…事前に薬局と連携することで、来店時に処方せん情報が自動登録され、毎回の登録の手間などが削減
・お薬手帳…市販薬と処方薬で分けて管理可能。医療機関名からの絞り込みにも対応
・服薬記録/リマインド…服薬時間を設定することでリマインド通知され、飲み忘れ防止をサポート
・家族の管理…自分だけではなく家族の情報も登録でき、家族のお薬管理も可能(人数制限なし)

CARADAお薬手帳:https://www.carada.jp/pharmacy/customer/

千葉大学医学部附属病院が健康管理共有アプリの提供を開始

国立大学の医学部附属病院が健康管理をはじめとする各種データ管理をするアプリの運用を開始した。テレビCMで見かけることの多いTISインテックグループとの共同開発。医療機関の導入はどこまで進むのか。

千葉大学医学部附属病院は、健康管理と情報共有システム「ヘルスケアパスポート」を28日より開始した。2年前まで運用していた同システム「SHACHI」が名称を変更、リニューアルしたもの。病院側の電子カルテと患者側の手入力による健康情報の管理機能から運用を始め、最終的にはお薬手帳や衛生検査、クラウド型の電子カルテにも対応していくという。

出典:千葉大学医学部附属病院

ヘルスケアパスポートでは、日々取得するバイタルや生活習慣などをメモにして記録。医療機関での受診の際にそれまでの体調に関するデータを提供することで、医療従事者が診察室外での生活リズムなどを把握し、診察することができるようになる。
なお、編集部でアカウントを作成してみたところ、登録の際はメールアドレスの認証と携帯電話番号の認証の2要素認証を行う必要があることがわかった。

アカウント登録後の初期画面。「バイタル」では日々の健康データを、「問診メモ」では自分で認識している健康情報を記録できる(一部加工しています)

ヘルスケアパスポートの前身となる「SHACHI」は2016年5月に運用を開始したが、セキュリティ上の観点から2年後の2018年に停止していた。再スタートを切ったヘルスケアパスポートはTIS社との協業により開発した。

出典:千葉大学医学部附属病院

千葉大学医学部附属病院:https://www.ho.chiba-u.ac.jp/index.html
TIS:https://www.tis.jp/service_solution/healthcare-passport/

「JSここメン」介護従事者向けのメンタルサポートをLINEで開始

エッセンシャルワーカーの多くを占める介護従事者向けに、匿名かつ無料で心理カウンセラーとコミュニケーションが取れるサービスが開始された。
LINEで出来るので簡単だ。ためらうことなく、気になる人はぜひ相談してほしい。

アイディアヒューマンサポートサービスが、LINEを用いた介護従事者向けの相談チャットサービスを始めた。保健師と産業医によるメール・電話の相談に加えて、心理カウンセラーのプロフェッショナルがLINE上で相談に応じる。匿名で相談をすることができ、費用は無料。

出典:アイディアヒューマンサポート

JSここメン(JSこころメンテ)は、全国老人福祉施設協議会が開設しているメンタルサポート事業。9月7日から特設サイトを開設し、介護従事者のよくある質問や産業医のコラムなども掲載されている。

出典:JSここメンHP

今回の取り組みを監修する立場にある全国心理業連合会(全心連)は、新型コロナウイルスの感染拡大とともに現れた「コロナうつ」や、SNS上での誹謗中傷による心のケアなどを行っている。2月にはダイヤモンド・プリンセス号の乗船者向けに厚生労働省が相談窓口を開き、全心連からはカウンセラーを派遣してLINEと電話で相談に応じた。

【JSここメン】
期間:2020年9月14日(月)〜2021年3月31日(水)
相談窓口:https://js-cocomen.com/
【LINEチャット相談】
期間:2020年9月15日(火)〜2021年3月30日(火)
実施日時:毎週火曜・木曜19時〜21時、毎週日曜17時〜19時
LINEチャットアカウント:https://line.me/R/ti/p/%40502myhys

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