正しく不妊治療のことを学ぶ 専門家による企業向けのオンラインセミナーを開始 プレ・マタハラを防ぐために

「企業が」不妊治療に対する正しい理解をする、という視点のオンラインセミナーが始まる。福利厚生の一環としてはもちろん、正しい相互理解の促進による従業員エンゲージメント向上が期待される。

不妊治療のデータ検索サービス「cooromi」を提供するvivolaは、企業向けに不妊治療セミナーを始める。不妊治療と仕事の両立をサポートするNPO法人フォレシアと、胚培養士の3者が講演する。企業、不妊治療患者、医療現場のそれぞれの観点から理解啓発を行い、従業員への福利厚生をはじめとする制度設計に役立ててもらうことがねらい。

登壇者一覧。出典:vivola

cocoromiは体外受精で妊娠した妊産婦のデータに基づく、統計的な治療検索サービスで、ウェブとアプリの両方から利用することができる。主に治療にかかる費用と期間、体外受精そのものの概要などを公開しており、治療を検討している人にとっての参考指標になっている。同社が体外受精経験のある夫婦300組へ実施したアンケートでは、治療方法を理解していないまま治療を続けていたと回答した夫婦が7割にも及んでいるといい、高額医療費が発生するにもかかわらず正しい理解が及んでいない可能性が高い。

NPO法人Fineの2017年の調査によると、不妊治療をきっかけに勤め先を退職する事例が5人に1人の割合でいることがわかっている。同法人の松本 亜樹子理事長は神奈川県への寄稿文の中で、「不妊治療は女性の生理周期に合わせて注射や投薬が行われるため、突発的な通院が必要で、先の予定が立てられない」「前回同様の治療を行なっていても、その時の体調により、ホルモン剤の効き目が変わってくるので、頻繁な通院も必要」と述べており、職場の理解なしに不妊治療を行うことは現実的にとても高いハードルであることがわかる。

フォレシアでは、完全匿名で相談できるLINEチャットボットのサービスも展開しており、不妊治療の専門家が常駐し、24時間対応している。概要は以下のとおり。

LINE完全匿名チャットボットサービスの概要。出典:vivola

オンラインセミナー問い合わせ(メール):contact@forecia-jp.com
NPO法人フォレシア:https://forecia-total-support.com/

不妊治療でのしかかる重圧 最善手は医療機関の「身近さ・通院しやすさ」にあり? 北九州市と企業が共同調査発表

菅 新総理大臣は不妊治療に対する経済支援を目標施策の一つとして掲げているが、経済対策以外にも気になる指標が北九州市の事例から見えてきた。

北九州市と「ルナルナ」を展開するエムティーアイは15日、ことし4月からおよそ1ヶ月にわたり「不妊治療から妊娠中、子育てに関する共同意識調査」を実施し、その結果を発表した。「子育て日本一を実感できるまち」を目指す北九州市では全国平均と比較して、医療機関の身近さや通院のしやすさを筆頭に、不妊治療費の助成があることを10ポイント以上高い評価が出た。政府が総力を上げて不妊治療の支援策構築に取り組む一方で、身近に頼れる医療機関があることの重要性も問われそうだ。

エリアによって全国平均との乖離も 20代後半から治療を始める割合が最多の北九州市民

北九州市では、妊娠を希望してから医療機関への受診までの期間は「半年以内」が最も多く、次いで「1年から2年未満」という結果が出ている。この順番は全国平均でも同様だが、「半年から1年未満」という回答は3位の全国平均に大きく差をつけて4位となっていた。さらに不妊治療の開始年齢では、全国と比較しても北九州市は「25歳から29歳」が圧倒的に多く、逆に「30歳から34歳」が全国よりも10ポイント以上少ないという。

出典:エムティーアイ

日本産科婦人科学会は、不妊を「妊娠を望む健康な男女が避妊をせずに性交をしているにもかかわらず1年妊娠しないケース」と定義している。また日本生殖医学会では、米国の生殖医学会の「不妊症と定義できるのは1年間の不妊期間を持つものであるが、女性の年齢が35歳以上の場合には6ヶ月の不妊期間が経過したあとは検査を開始することは認められる」という声明を引用しており、年齢が高まれば高まるほど早期に検査と治療を開始した方が良いという考えが一般的との見解だ。

通院頻度の高い女性の不妊治療を支えるのはパートナーの理解と、「身近にある医療機関」の存在

厚生労働省が提供している『不妊治療と仕事の両立サポートハンドブック』によれば、女性が月経周期ごとに通院する日数の目安は一般不妊治療で2−6日、生殖補助医療で4日ー10日と1日近い通院を1−2日であるとしている。しかしその一方で、男性は治療方法に問わず女性の月経周期ごとの0日から半日と、大きな開きがある。今回発表された調査において、治療を受けた北九州市民の助けになったことの指標第一位は「医療機関の身近さ、通院のしやすさ」で、次いで「パートナーの存在」となった。

出典:エムティーアイ

なお、現在北九州市では不妊治療の費用を助成する制度があり、適用になる指定医療機関は市内に3箇所、福岡市内の8箇所など、県内全てで18箇所ある。自身の自治体における制度の有無や条件を確認することも大切だが、通院できる医療機関を調べるところからが不妊治療の第一歩ではないだろうか。

北九州市 特定不妊治療費の助成:https://www.city.kitakyushu.lg.jp/ko-katei/file_0022.html

厚生労働省 不妊治療と仕事の両立サポートハンドブック:https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/dl/30l.pdf

エムティーアイ プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000771.000002943.html